特異系の正準形式と量子化
九後汰一郎「ゲージ場の量子論〈1〉 (新物理学シリーズ)」5-2のサマリ
・特異系
Lagrangian L(q_i, q'_i) (i=1,…,N)から正準運動量p_i=∂L/∂q'_iを求めてHamiltonian H(q_i,p_i)を作るときに,det[ ∂^2 L/∂q'_i ∂q'_j ] = 0だと特異系(q'_i = q'_i(q,p)のように表せない).
・1次拘束条件
A_ij = ∂^2 L/∂q'_i ∂q'_j のrank m<Nに応じて,m個の拘束条件Φ_A=0
菅野礼司「ゲージ理論の解析力学」p.17に詳しい
・第2類拘束条件
H~(q,p) = H(q,p) + Σ_A λ_A・Φ_A (λ:Lagrange未定係数)
拘束条件が時間発展にconsistentであるためには dΦ/dt = {Φ, H~} = 0 が必要
→ もしC_αβ = {Φ_α, Φ_β} が正則ならλ_Aが決まる(第2類拘束条件)
→ C_αβは反対称,det C = det C^T = (-1)^r det Cのため r=2m(Cは偶数次元)
・Dirac括弧
第2類拘束条件ならばλが決まり,そのときの H~ とのPoisson括弧を,H とのDirac括弧 { F, H~} = { F, H } + λ { F, Φ } = { F, H }_D と呼ぶ
Dirac括弧は拘束条件によって制限されたΓ*多様体(2N-m次元)上でのPoisson括弧に対応する.
・第1類拘束条件(C_αβが非正則)
→ { Φ_A, Φ_B } = fABC Φ_C :Φ_Aを生成子とするリー代数
→ 系はΦ_Aが生成する変換(ゲージ変換)で不変
→ ゲージ不変性のためλが決まらず,Γ多様体上での運動方向 dF/dt が決まらない
・ゲージ固定
λが決まるようにゲージ固定条件 χ(q,p) = 0 を加える.dχ/dt = 0 からλが決まる.
→ Φとχをまとめて拘束条件とすることにより,全体として第2類拘束条件になる.
→ Dirac括弧を用いて量子化できる
→ C_αβ (2k x 2k行列, 2k=m)は反対称行列でかつ正則(非退化交代行列)なので,シンプレクティック形式Jに変換できる!
L * C * L^t = J
J = [ 0 I_k ] (I_kはk次元の恒等行列)
[ - I_k 0 ]
小松彦三郎「岩波講座 応用数学〈15〉〔基礎6〕 ベクトル解析と多様体 II /〔対象9〕 社会科学における数理的方法」p.154に詳しい
→ Lで線形変換した拘束条件 Φ_A ==> (ψ_a, φ_b) では { ψ_a, ψ_c } = { φ_b, φ_d } = 0, { ψ_a, φ_b } = δab になる(C=>Jだから)
→ q'_a = ψ_a,p'_b = φ_b を正準座標,正準運動量とみなすことができる!
→ (q*, q', p*, p')が正準変数(2N次元)になる
= dq dp [ π_A δ(Φ_A) ] [√ det { Φ_A, Φ_B } ]
→ 拘束条件(のうちのゲージ固定条件)はδ関数をガウス積分で表すと,ちょうどLagrangianへのゲージ固定項の形になる
(杉田勝実「経路積分と量子電磁力学 POD版」5−8にも詳しい説明あり)